財務戦略のパートナーとして、中小企業の成長と再生を支援する株式会社ベスト・イン・ブルーム。
代表の才田貴広さんは、これまで、経営者に伴走する”黒子”に徹してこられました。
「別に自分の想いや背景を、隠してきたわけじゃないんです。ただ、自分のそれらをちゃんと整理して、言語化して、伝える機会が今までなかったんです。
加えて、自分なんてそんな大したことはしてきていないし、ただひたすらに真面目に愚直にやってきただけなのに、自分のことを語るなんてちょっと気が引けるという気持ちもありました」
そんな中、2025年の創業10周年を前に、「これまでの自分の歩みや想いを言葉にして残してみよう」と決意した才田さん。
今回は、ストーリーブック製作に至った背景、ストーリーブックを手渡したときの周囲の反応や、才田さん自身の”新たな気づき”について、お話を伺いました。
「はじめまして」から始まった、10周年のストーリーブック制作

高野:共通の知りあいである、代表世話人の杉浦佳浩さんのFacebookを通じてお互いの存在は知っていましたが、実際に初めてお会いしたのは東京で開催されたセミナーだったですね。
才田:そうですね!2025年の夏頃でした。「あれ?もうお会いしてましたよね…いや、実は”はじめまして”ですね!」とお互いに同じ感覚になったのを覚えています(笑)。SNSでずっと拝見していたので、勝手に知り合いのつもりになっていたんですよね。
高野:その後、改めてお話をお伺いする機会があり、才田さんが創業10周年を迎えられると伺いました。そこで「節目だからこそ、これまでのことを振り返り、整理して言葉に残すタイミングかもしれない」とおっしゃって。
そんな流れから、ストーリーブック制作の話になりましたね。
才田:はい。実はその前後で、ストーリーテラーズさんから電子書籍を出版された、SAKURAISEグループHDの粕井社長とお話する機会がありました。
粕井さんが、「ストーリーブックをつくって本当に良かった」「採用にもかなり活用できている」とお話されていて、私も実際にそれを読ませていただいたんです。
「あぁ、こうやって想いを言語化するツールというのは、とてもいいなぁ」と率直に感じました。
それも後押しになり、自分もこの機会にストーリーブックを作ってみようと思いましたが、正直、最初は「私の人生なんてそんな大したことはない」という気持ちが強く…。
ストーリーブックとして残すのは少し照れくさいなという想いもありました。
でも今思えば、こうしたことは、きっかけがないと流れてしまうんですよね。一歩踏み出すトリガーがないと、形にしにくいというか…。
今回はご縁が重なって背中を押してもらったことで、「創業10周年の節目に、これまでの歩みと想いをストーリーブックとしてまとめてみよう」と決意することができました。
インタビューで気づいた、「自分が頑張ってきた」という実感

高野:実際に制作が始まり、インタビューを重ねていく中で、才田さんの中に何か変化はありましたか?
才田:ありましたね。最初は「こんな話題で大丈夫かな…」と思いながら話していました。普段はお客様の話を聞くことが多いので、改めて自分のことを話すなんて慣れていなくて(笑)。
でも、インタビューの中で過去を振り返っていくうちに、「あのときの自分は、こんな想いで進んでいたんだなぁ、こんなことを大切にしてきたんだなぁ」と、色々なことが思い出されてきたんです。
そしてシンプルにこう思いました。
「俺、頑張ってきたんだな」と。
普段は日々の業務に追われて、立ち止まって振り返る時間は取れませんし、頭の中では常に「初心を忘れず、原点に戻ることが大切だ」と思っていても、実際にはできていないことも多いですからね。
高野:シンプルに「俺、頑張ってきたな」と素直に思えたと…素敵なことですよね。
才田:大げさではなく、本当にそう感じたんです。加えて、自分が話したことが言語化されて原稿として出てきたときは、さらに驚きました。
「自分は、こんな人生を歩んできたのか!その時々で、めちゃくちゃ頑張ってきたんだな」って…
自分のことなのに、客観的に読めて、感動しました。
最初は気恥ずかしさがありましたけど、最終的には「ストーリーブックづくりにチャレンジして良かった」と思えるようになりました。
自分の振り返りにもなり、家族や近しい人に自分の想いを伝えるきっかけにもなった。結果的にやってみてプラスしかなかったですね。
両親が一番喜んでくれた、ストーリーブック

高野:ストーリーブックが完成して、まず最初にどなたにお渡しされたのですか?
才田:はい。最初に渡したのは両親で、あとは近しい方々にお渡ししました。中でも一番喜んでくれたのは、両親でした。
高野:おぉ…そうなんですね!確かに才田さんはお話の中でも、「ご両親に仕事の話をあまりしてこなかった」とおっしゃっていましたよね。
才田:そうなんです。別に隠していたわけではないんですが、改めて話す機会がなかったんですよね。宮崎から大阪に出てきていたこともあって、そもそもじっくり話す時間も少なかったですし。
それに、親子って意外とこういうこと、話さないじゃないですか。仕事をしているのは知っているけれど「どんな仕事をして、何を考えてやってきたか」までは伝えてこなかった…。
ですから、このストーリーブックを読んだ母にとっては、読んで初めて知ったことも多かったようで「あんたも、いろいろと頑張ってきたんだねぇ」と、しみじみ言われました。
あと、娘たちにも渡しましたが、まだ感想は返ってきていませんね(笑)。
でも、いつかどこかでパラパラとページをめくってもらって、「父親はこういうことを考えて仕事をしていたんだな」と分かってくれる日が来たらいいなと思っています。
高野:近しい人ほど、かえって話す機会がなく伝えていない、というのはよくありますもんね。意外とお客様にも、自分の想いなどを伝えられていないことも多いと思います。
才田:本当にそうですよね。付き合いが長い方から「ところで才田さんって、何をしている人でしたっけ」と言われることも未だにあります(笑)。
だから、こういう形で渡せるのはすごく良いなと思いました。
「誰にでも配るものではない」信頼関係を深めるためのツールとして

高野:ストーリーブックは、誰にでもお渡しするというより、「渡す相手を選ぶことが大切だ」と、以前才田さんはおっしゃっていましたよね。
才田:はい。これは、手当たり次第に配るものではないと思っています。「そこまで興味がないだろうな、どうせ読まれないだろうな」という方に無理にお渡ししても仕方がないですからね。
高野:どんな方にお渡しすることが、一番効果的だと感じておられますか?
才田:大きく言うと二つですね。
-
- 付き合いが長いのに意外と深い話ができていない相手(親子もそうですが、関係が近いほど意外と伝えていないことが多い)
- これから深くお付き合いしていきたい方(「これからパートナーとして一緒にやっていこう」と思えた方に渡すと、考え方が伝わりやすくなり、結果的に良い仕事ができる)
それと同時に、顧問先やお客様のように、これまで関係が続いてきた方にもお渡ししたいですね。先程もありましたが、関係性が近いほど、かえって伝えていない場面も多々ありますから。
私の仕事は社長と向き合って一緒に進めていくスタイルなので、信頼関係がないと成り立ちません。だからこそ、「どういうスタンスで支援するのか」が伝わること自体に意味があると思っています。
AIの時代だからこそ、「刺さる言葉」と伴走の価値を大切にしたい

高野:ストーリーブックを「信頼関係を深めるために、大切な方にお渡しする」とお話しいただきましたが、その上で大切なのが「伝わる文章を書く」ということだと思うんです。
もちろん、AIは便利なツールですし、私たちも使います。そしてAIが出した文章は綺麗で整っている。でも、それが読んだ相手に響くか、といったらそうではない。
伝えるのではなく、伝わる文章を書く、というのが、私たちが常に意識するべき点だと思っています。
才田:はい。私の仕事でも、もうAIは切り離せないですね。調べ物のスピードも全然違いますし、たとえば決算書を読み込ませて分析の方向性を掴むような使い方はとても便利ですね。
ただ、やはり文章となると、”行間”が大切になってくる。同じ単語でも、前後の流れや、その人の表情や温度感で意味が変わる。
そこは人間が介在しないと出すことができない部分だと思います。
AIは、まずたたき台を出すのがすごく早い。でも、AIの答えが全部正しいわけではない。最終的に判断するのは人間です。
私の仕事でも、決算書の数字が同じでも、会社の状況や社長さんの覚悟で判断は変わります。現実は数字やロジックだけで機械的に進められるわけではありません。社長さんの気持ちも揺れますし、状況も変わりますから。
高野:確かに、数字や分析は大切ですが、それ以上に大切なのは、そこにある人の感情や心の部分ですよね。
才田:まさにそうです。数字はもちろん重要です。でも、理屈だけでは動かない場面が必ずあります。
例えば、債務超過の会社をどうしていくか、という話も、AIに聞けば「この債務超過の会社を立て直すのは不可能だ」という結論になりやすいと思います。けれど、人間には「それでもやり遂げたい」という想いがある。その想いに寄り添って一緒に進むのは人間の役割だと思っています。
高野:ストーリーブック制作も似たところがありますよね。先程も話しましたが、文章自体はAIでも整えることはできます。でも、人の心に届くかというと、また別の話ですから。
才田:今回のストーリーブックを通じて、そのことを実感しました。また、言葉にして残すことの大切さも改めて感じることができました。
そして、AIの性能が進んでも最後に人の心を動かすのは信頼関係や人間味のある伴走ですから、ある意味そこに自信が持てたように思います。
次の10年に向かって、私もしっかり頑張っていきますね!
高野:有難うございます!20周年にはまた改めてストーリーブックが出せるように(笑)、私も、社長としても会社としてもしっかり成長していきます。このたびは本当に有難うございました!
取材・インタビュアー:高野/構成・文:栗田加奈子