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働きたくても働けないママが、輝ける場所を|株式会社meet in 齋藤正秋氏【社長の原点 Vol.1】

社長の原点 meet in 齋藤正秋

STORY TELLERS編集長の高野が、社長の原点に迫る特別企画「社長の原点」。

記念すべき第一回目は、株式会社meet inの齋藤正秋氏(以下、齋藤)に話を聞いた。

meet in齋藤

株式会社meet inは、オンラインツール 「meet in」の開発・提供・教育研修を行う会社だ。2017年、株式会社アイドマ・ホールディングス(東証グロース上場会社)の子会社として設立された。

同社は、わずか11ヶ月で1,000社以上 、現在8,200社以上の導入実績を持つ。また、驚くべきことに、そんな会社の成長を支えているのは、50名の在宅ママチーム。

うちで働いてくれるママさん、めちゃめちゃ優秀なんです。全部、ママさんのおかげです

何を聞いても齋藤は、満面の笑みで、謙虚な答えを返してくる。今回はそんな齋藤に、事業の原点となる想いについて聞いてみた。

元同僚からの、運命的な提案

元同僚の、アイドマ・ホールディングス代表の三浦と齋藤。ある日、久しぶりに食事をすることになった。

「当時からアイドマ・ホールディングスは、主婦のための在宅ワーク求人サイト『ママワークス』を運営しており、会員数や掲載企業数は右肩上がりに増加していました。

聞けば、さらなる展開として、ママ達が子どもと一緒に働けるキッズスペースつきのコワーキングスペース『ママワークスペース』を、埼玉県に近いうちにオープンさせるという話。

私も一人の夫として、出産後、働きたいのに働けない妻の様子をずっと目の当たりにしており、この社会の不条理を、何とか解決できないかと思っていたタイミングだったので、一緒に仕事をすることになりました」

meet in齋藤

そして、2017年11月27日。

齋藤の取り仕切る『ママワークススペース』は、70名のママメンバーと共に無事にオープンにこぎつけ、幸先の良いスタートを切った…かのように見えた。

だが、実際は、波乱の幕開けとなった。

ママメンバーマネジメントの実際

当時の齋藤には、ママチームのマネジメント経験など一切なかった。にも関わらず、毎日50〜70名のメンバーが出社するママワークスペースを、一人で運営しなければならなかった。

「初日早々、ママからのクレームの洗礼を受けました。託児スペースであるアニメを流すと『わが家は◯◯を見せていないからやめてくれ』『子どもが怖いと言って泣き出した』というクレームが。

あの子がうちの子を叩いた。
あの子の投げたものがうちの子に当たった。
保育士が気に食わない。
パソコンの電源がつかない。
あの人と一緒には働きたくない。

もうマネジメントなんてあったもんじゃない。当時は2ヶ月で7キロも痩せちゃいました(笑)」

meet in齋藤

しばらく経つと、ママの中からカリスマ性のあるリーダーが現れ、それによって派閥が生まれ、ママチームのマネジメントはどんどん機能しなくなっていった。

次第にメンバーが1人減り、2人減り…

数ヶ月後にはメンバーの業務継続率はわずか28%、売上も想定の5分の1〜10分の1しか上がらない危機的状況に陥ってしまった。

「私が伝えたことが全く現場に伝わらないし、指示も一切通らない。これは何かがおかしいと思い、現場のママさんと色々話をしてみたところ、一部のカリスマママによる意識操作が行われていることがわかりました。

ママたちが指示を仰ぐべき相手がその方になり、私はいつの間にやら窓際に…。

でもそれもこれも自分の責任。仕事のできるママを頼りすぎたことで、彼女たちに大きな負担とプレッシャーをかけてしまった。

そのことで、次第に歯車が狂い始めてしまった。そこで、チームのあり方を見直し、一から改革しようと、覚悟を決めました

そこから齋藤は「ビジョン共有」「基本的なルールの設定」「階層をつくらないフラットな組織運営」といった改革に着手。

「目を見て挨拶をする」「時間を守る」

そうした小さなルールを徹底し、ママ同士で上下関係が生まれないよう、リーダーをイメージさせる名称は全て変更し、横並びの組織を作り上げていった。

「もちろん、辞めていったママ達もいました。でも最終的には、同じ方向を向いて頑張ってくれるメンバーが残り、結果的に売上も当初思い描いていた数字に届きました。

働く時間が限られる忙しいママだからこそ、生産性とクオリティの高い仕事を実現できる。

正しいチーム運営をすれば、ママチームの強さ、可能性を存分に引き出して結果を出すことが出来る。そのことを実感した出来事となりました

ここまで情熱を燃やせる、齋藤の原点

齋藤はなぜ、働きたいママが働ける環境づくりに、ここまで強い情熱を持って取り組むのか。

それには、冒頭に少し触れた、齋藤の妻の存在があった。

もともと美容師だった齋藤の妻はその後、美容機器メーカーへ転職し、外回りの営業職についていた。

「妻は、仕事が大好きで、営業の仕事にも全力でやりがいを持って取り組んでいました。

ただ、妊娠すると状況は一変。

妻はつわりがかなり酷く、そんな状況でも必死で外回りの仕事を頑張っていましたが、無理がたたって、ある日とうとう倒れてしまった。

病院での診断結果は「切迫早産」。絶対安静を余儀なくされました。

当時は在宅ワークという選択肢などなかったので、当然そこからは仕事が一切できなくなってしまいました」

出産後、妻は、復帰のために保育園を探し始めたが、待機児童が多く、一切預けられる見込みがなかった。

働きたいのに子どもの預け先がない。
少しでも入りやすくなるようにと、必死で入園の点数稼ぎをする。
最寄り駅から自転車で30分かかる保育園でも、望みをかけて入園希望を出す。
それでも駄目なら、一時保育枠で、週に1〜2回預けて働ける道を探す。

そんな妻や周囲のママ達の様子を目の当たりにしながら、齋藤は思った。

「そこまでしないと働けないなんて、明らかにおかしい…!」と。

「出産を一度でも経験すると、女性は働き方の自由を大きく奪われます。でも、働きたいのに、働けないなんて、おかしい。

『この不条理な問題を、どうにか解決できないか』
『働きたいのに働けないママが、安心して働ける場を作りたい』

この強い想いが、ママワークス立ち上げの大変な時期に、踏ん張れる力をくれたのだと思います」

あの日からもうすぐ6年。

meet inは現在、国内8,200社以上に導入されるオンラインツールへと成長した。
その成長を支えているのは、紛れもない、50名の在宅で働くママたちだ。

また、クライアントの中にも、在宅ママの力を活かし、事業を成長させる企業がどんどん増えているという。

『働きたいのに働けないママが、安心して働ける場を作りたい』

彼が当時描いた未来は、数年の時を経て、着実に実を結び始めている。

meet in齋藤

幸せだと感じられる心を育むこと

最後に、齋藤の今後の個人的な夢や目標について聞いてみた。

そうですね…幸せな世界をつくりたい、ですね。こんなことを言うと、すごく怪しく聞こえるかもしれないけれど(笑)

若い頃の私は、お金持ちになれば幸せになれる、と思っていました。

でも、多くの経営者の方とお会いしてお話をお聞きするうちに、『お金と幸せは、必ずしも比例しない』と気づいたんです」

お金がなくても、幸せな人もいる。
お金がたくさんあっても、幸せじゃない人もいる。

では、人の幸せとは一体何なのか…

この問いがいつしか、齋藤の人生の指針となった。

「今、幸せの概念が大きく変わってきています。私が思う幸せとは、『幸せだと感じられる心を育むこと』。そのためには、自分の気持ちに素直にならないといけませんよね。

まずは自分自身が、このことを体現することで、その環が広がっていくといいなと…幸せな世界をつくる。

壮大過ぎる目標ではありますが、そこに向けて今自分ができることをコツコツとやっていきたいですね」

齋藤が、いつも笑顔で楽しげな理由が腑に落ちた。
それは、もはや、齋藤の生き方そのものなのだ。

私もファンの一人として、彼の挑戦を今後もずっと、追いかけ続けられればと思う。

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