今回は、北海道の弟子屈(てしかが)町から、地域創生チャレンジを行う、ホテル「レラ摩周」のオーナーの松山裕一さんのストーリーをお届けします。
ご本人の目線で、ご本人の言葉で、紡いだストーリー。ぜひ、御覧ください。
皆さんこんにちは。
2022年の春より、北海道は弟子屈町にて、「探求学習プログラム」を体験できる宿泊施設『レラ摩周』を運営しております、松山 裕一(まつやま ゆういち)です。

レラ摩周の外観
そもそも、この『弟子屈』という地名、何と読むか皆さんはご存知ですか?
正解は「てしかが」。
「テシカ」とはアイヌ語で「岩磐」、「ガ」はアイヌ語で「上」を意味します。
北海道の地名には、珍しいものが数多く存在しますが、実は「アイヌ語」が語源になっているものも多いんです。
弟子屈町は、北海道の東(右)側、釧路の北に位置する、川湯温泉で有名な温泉地。
北に行けば、流氷で知られる知床半島、近くには、霧の摩周湖、日本最大のカルデラ湖である屈斜路(くっしゃろ)湖、まりもが有名な阿寒湖と、見どころに囲まれた町です。

「摩周湖」
にもかかわらず、弟子屈町の観光客は、年々減り続けています。
加えて、深刻な過疎化により、一時は13000人を超えていた町の人口も、現在はその半分以下の6000人にまで落ち込みました。
そんな弟子屈で、なぜ私が「新たに、探求学習プログラムが体験できる宿泊施設の運営を始めたのか」。
今回はそのあたりについて、お伝えできればと思います。
弟子屈から、チャレンジ!
私がここ、弟子屈でチャレンジする理由。
それは「学びの宝庫である弟子屈の魅力を、1人でも多くの皆さんに、体感していただきたい」からです。弟子屈町は、今日本が抱える社会課題やそれらを解決するヒントが、ぎゅっと凝縮された場所。
まさに、「現代の日本の縮図」とも言っても過言ではない、大変興味深い地域なのです。
例えば、自然保護の観点で見ると、弟子屈には、まだ手つかずの自然がたくさん残されています。
もののけ姫に出てきそうな、広大で神秘的なアカエゾマツの原生林。

*画像出典:弟子屈ナビ:「アカエゾマツの原生林」
プラネタリウム顔負けの、迫力満点の夜空。

「夜の摩周湖」
これほどまでに豊かな自然と人が、ここ弟子屈では、長きに渡り共存して来ました。
また、今話題の再生可能エネルギーの観点。
弟子屈町は古くから温泉が湧く、火山活動が活発な地域です。

「硫黄山」

「硫黄山」
地面から出る蒸気に直接触れることができる硫黄山は、地球の息吹を感じられる壮大な場所。
実は数年前に「弟子屈のマグマの地熱を活用し、床暖房に応用できないか」というアイデアが持ち上がり、それを形にするべく、今、町長を交えた「再生可能エネルギー×地域創生」の動きも加速しています。
他にも、深刻な過疎化問題や、アイヌ民族と日本人の共存と民族多様性など…
弟子屈に足を運べば、今の日本の社会問題と、それに対する解決策が自ずと見えてくる。
そのことを、学生さんや、シニアの皆さんに向けて、「探求学習プログラム」として、発信していくのが、私の大切な役目なのです。
弟子屈と私のご縁
私はもとは、網走出身。
そんな私と弟子屈のご縁には、祖父の存在が大きく関わっています。
祖父は、弟子屈町の川湯温泉が大好きだったので、冬になると親戚みんなで、よく川湯温泉へ温泉に入りに行きました。

*画像出典:弟子屈ナビ「川湯温泉」
そんなある日、「祖父が、川湯に別荘を立てる計画を立てている」という話を父から聞かされました。
「えぇー!」と私自身びっくりしましたが、その後、なんと祖父は、川湯温泉でホテル経営をスタートしたではありませんか…!
私の父は「大事な老後の資産を投じて、一体何を考えているんだ!」と大反対。
一方の祖父は、そんな反対をもろともせず、ホテル経営に精を出していましたが、ある日突然、帰らぬ人になってしまいました。
当時ホテルには、お客様も来てくださっており、従業員もいましたから、「誰がホテルの経営を引き継ぐのか」という話し合いが行われる中、私の頭に、ある光景が思い浮かんだのです。
それはまだ、祖父が元気にホテル経営をしていた頃のこと。
週末の休みを利用して、私は時たま、祖父のホテルに遊びに行っていました。

「川湯温泉駅」
当時、川湯温泉は、「ホテルも古く、さびれた温泉街」というイメージがありましたが、夕方になり、暗くなり始めた頃合いの街の雰囲気は、風情があり、何とも綺麗でした。
土産物屋には明かりがついて、ホテルの窓からはちらほらと部屋の明かりがもれていて。
ネオンの中、宿泊客が思い思いに街歩きしている様子は、絵葉書のように幻想的でした。
北海道の冬はとても寒いので、土産物屋やラーメン屋がホテル内に併設され、外に出なくても全てが完結できる温泉地も多いんです。
そのため、冬に宿泊客が街歩きする様子などあまり見られません。
でも川湯温泉には、宿泊客の街歩きの風情がしっかりと根付いている。
「川湯温泉はもう終わった」と言われているけれど、そんなことはない。まだまだここは終わっていない、川湯はまだまだやれる。
そんな風に思ったことが、祖父の跡を継ぐ話し合いの場でふと頭をよぎり…
思わず「分かった!俺がじいちゃんの跡を継ぐ!」と父の前で宣言していました。
私が、26歳の時でした。
弟子屈の価値を実感や魅力を再発見
時は流れ、祖父のホテルは老人ホームに形を変え、経営を続けて20年ほど経った頃。

私が運営する老人ホーム「ケアーサポートまつやま」
弟子屈町にあるバリアフリー型のホテルを経営されている70代のご夫婦から、
「誰も跡を継いでくれる人がいない。松山さん、どうかここの経営を引き継いでもらえないだろうか」と頼まれました。
それが、『レラ摩周』でした。
このことをきっかけに、大阪や東京の友人経営者や、地域創生、旅行業の専門家の皆さんが、実際に弟子屈まで足を運んでくださり、
「どうすれば、このホテルを、弟子屈を盛り上げることができるのか」
みんなで、一生懸命知恵を絞りました。
驚いたことに、本州から弟子屈にきた皆さんは、毎回口を揃えてこうおっしゃる。
「松山さん、弟子屈は、魅力の宝庫だよ!」
と。
手つかずの自然、火山、地熱のエネルギー、温泉、人の温かさ、過疎化の課題…
私にとっては身近で当たり前だったことが、外から来た人の目には「可能性と魅力の塊」に映っていた。

絶景が広がる「美幌峠」
今まで私は「弟子屈で、本当に地域創生が実現できるのだろうか」と半信半疑でしたが、周囲のお力添えのおかげで、ようやく、心が固まりました。
「みんなの力を借りれば、もう一度この弟子屈という土地を、蘇らせることができるかもしれない。そしてこれは、祖父の代からこの土地と共に歩んできた私だからこそ、果たせる役割なのだ」
と。
このチャレンジは、決して簡単ではないことは分かっています。
でも、「学びと魅力の宝庫」である弟子屈の魅力を伝え続け、1人でも多くの皆さんに、弟子屈を体感し、喜んで頂くことが私の人生の使命。
この思いを胸に、私はこれからもチャレンジを続けていきます。
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