再生可能エネルギー事業で地域創生に挑む。やりがい、大変さ、将来性は?

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今回お話をお聞きしたのは、ふるさと熱電 地域創生部の石川和貴(いしかわ かずき)さん。穏やかな笑顔と、相手を包み込む優しい雰囲気を持った方です。

2019年7月に、地熱発電による温泉街の地域創生事業を行うふるさと熱電に入社して以来、熊本県小国町(おぐにまち)わいた地区の温泉街の皆さんと共に、地熱発電による地域創生を推し進めてきました。

今日は、地域創生という仕事の醍醐味やリアルな部分について、石川さんにお聞きすることにしましょう。

石川さんが所属する「地域創生部」とは

地元住民の皆さんや社内メンバーが厚い信頼を寄せる石川さんに、まずは「地域創生部とは、どのような役割を担う部署なのか」質問してみました。

石川「地域創生部の役割は『地元温泉街が主体となり、地熱発電による地域活性化を実現するためのパートナー』といったところでしょうか。
時にはファシリテーターに、時には黒子に…と、状況に応じて柔軟に役割を変えるのが、僕たちの仕事なのだと思います。
でも、主体はあくまでも温泉街の皆さん。地元住民の皆さんに『地熱発電による地域創生』を自分事として捉えていただいて初めて、持続可能(サステナブル)な、真の地域創生に繋がっていくんです」

ふるさと熱電

ただ、当然のことながら、最初から温泉街の皆さん主体で物事を進められるわけではなく、「地熱発電には大反対」の状態からスタートすることが大半です。
そこから温泉街の皆さんとの対話を通じて信頼関係を築き、発電所建設に肯定的な意見が増え、合意形成ができたら、実際に発電所を建設。

その後も、売電収益で地熱を利用したエコなグリーンハウス事業を立ち上げたり、ワーケーション施設を作って人を呼び込む等して、温泉街の魅力を活かした地域活性化を、住民の皆さんが主体で進めていけるように伴走する。

そんな、壮大なプロジェクトを支えるのが、地域創生部の役割なのです。

時間もかかる上に、大変なことも多い仕事ですが、「熊本県小国町 わいた地区のような事例が全国に広がれば、地域活性化が進み、日本がもっと良くなる」という未来を想像すると、石川さんはとてもワクワクしてくるのだと言います。

火山大国の日本で、注目を集める地熱発電

石川「『地域創生』『地方創生』という言葉を、最近はよく耳にするようになりました。ですがふるさと熱電は、その言葉が普及する以前から、地熱発電による地域創生に取り組んできました

ふるさと熱電の創業は、2012年の7月。

観光客減少に悩む日本の温泉街を、地熱発電の力で復活させたい」という想いから、設立された会社です。

ふるさと熱電

2015年6月には、熊本県小国町のわいた地区で、「わいた地熱発電所」の商用運転を開始。当時、日本で実に16年ぶりに地熱発電所の商用運転を開始したということで、大きな注目を集めました。

現在このわいた地熱発電所は、年間1,700kW以上の電気を供給しています。これは、小国町の全世帯電気供給量を上回る供給量。これらの売電収入や、地域活性化に向けた取り組みにより、わいた地区の温泉街は今、少しずつ活気を取り戻しつつあります。

地熱発電で地域創生が進む…とはいえ、地熱発電とは一般的にはあまり馴染みのない言葉。そもそも「地熱発電」とはどのような発電方法なのでしょうか。

石川「地熱発電とは、火山活動による地熱を用いて行う発電方法のことです。わいた地熱発電所の場合、地下から噴出する高温の蒸気の力でタービンを回転させ、発電する『フラッシュ方式』を採用しています。
地熱発電は、再生可能エネルギーであり、他の発電方法に比べ、温室効果ガスや二酸化炭素の排出が少なく、天候・気候・昼夜に左右されない良さがあります。
また、日本のような火山大国では、大きな可能性を有する発電方法なので、今とても注目されているんですよ」

ふるさと熱電

一番良い熱源を掘らせて頂くために

ふるさと熱電が手掛ける地熱発電は、「温泉街の方々と協力して、一番良い熱源を掘らせて頂けるよう、温泉街の方々との人間関係構築を大切にしている」ことが特徴であり、ここが、一番の肝だと、石川さんは言います。

石川「開発コストを抑え、開発期間を短くし、かつ、確実に熱源に辿り着くためには、『その温泉街にある一番良い熱源を掘らせて頂く』必要があります。日本の温泉街は、はるか昔から、火山地帯の地下にある熱源の真上で井戸を堀り、湧き出た温泉を活用して、発展してきました。でも、掘削の深さがとても浅いので、その地下に眠る熱源の、ほんのわずかしか使っていないことがほとんど。
それって、すごくもったいない。
コロナ禍で観光客が激減している中、観光収入以外の新たな収益の柱を作るためにも、皆さんの住む地域の真下に眠る地下資源を、もっと有効に活用していきましょう、ということなんです」

ふるさと熱電

地熱発電による熱を利用した、とてもエコなグリーンハウス。

とはいえ、温泉街の隣接地に地熱発電所を建設する提案を、地元住民の皆さんがすんなり承認するはずがありません。

温泉街に地熱発電所を建設するなんて、景観が損なわれてしまうんじゃないか」
「もし深く掘って、温泉が枯れてしまったらどうするんだ」
「掘削して、本当に井戸を掘り当てられるのか?本当に売電収益が得られれるのか」
「どうせ、自分たちの利益のためだけにやってるんだろう」

このような反対にあうことは必至。

そのため同業他社はたいてい、温泉街の真下を掘削することを諦め、周辺地域で掘削作業を開始します。ただ、熱源から離れることで掘削コストが重み、掘削率も悪くなり、途中で開発が頓挫する事例も多くみられます。

だからこそふるさと熱電は、真正面から堂々と、温泉街の人達に向き合うのです。

石川「絶対に価値があると信じて、僕たちが地元の皆さんと話を進めていける背景には、やっぱり創業者の赤石の存在が大きいですね」

創業者の赤石さんって、どんな人?

ふるさと熱電創業者の赤石さん。「冷静で賢い人」という第一印象ですが、実際に話してみると、冗談も多く、気さくで、半端ない熱意の持ち主。「さすが、地”熱”発電の会社の社長だけあって、熱い」わけですね(笑)

ふるさと熱電

石川「赤石は日頃から、温泉街や金融機関の皆さんといった社外の方だけではなく、社内でも『地熱発電事業の意義や可能性』『日本の温泉街を再び蘇らせる想い』を熱く話してくれます。
それを聞いているうちに『そうか…地熱発電事業は、これからの日本に絶対に必要なんだ』と理屈が腑に落ち、僕の心にも火がつきました。

赤石さんのスタンスがいつもブレないから、石川さん達も自信を持って、目の前の仕事に向き合える。

そして、地熱発電事業が切り拓く未来のイメージがハッキリ描けているから、どんな無理難題がきても「よし、やってやろう!」と思えるのだと石川さんは話します。

地元住民の皆さんの心を、180度変えてしまう魔法

わいた地熱発電所1号機の運用開始からしばらく経った頃、「地熱発電所2号機を建設しよう」という話が持ち上がりました。そして数年の準備期間を経て、いよいよ今年2022年の夏、発電所2号機の建設がスタートします。

最初は大反対にあっていたのに、数年後には「新たに地熱発電所を建設しよう」という声があがる…どうすれば、こんなにも人の心を動かすことができるのでしょうか。

石川「人の心を簡単に変えられる魔法があればいいですけど、実際はそうではないので…(笑)やはり『ふるさと熱電の技術と社員への信頼』の結果かなと。
僕達は、自分たちの儲けのためにやっているわけではない。
地熱発電に取り組めば、この温泉街は今まで以上に活気にあふれる』と信じて、諦めずに、地道に話し合いを続けられるか。そこに尽きると思います」

ふるさと熱電

温泉街は、いわゆる田舎の、村社会。昔からその地域に根付く、独特な風土や慣習があります。そんな地域で、ふるさと熱電の社員が普段接するのは、温泉組合のシニアの皆さんがほとんど。都会に住む人たちには、ちょっと想像しにくい世界かもしれません。

石川「地熱発電の話ばかりしているわけではなくて『この前、孫がね〜』『子どもが大阪に働きに出たっきり帰ってきてくれなくてね〜』といった世間話も多いですよ(笑)でも、そういう雑談から、信頼関係が構築されていく。そして、いざという時に『ふるさと熱電さんの言うことだったら、ちょっと話を聞いてみようか』という風に、思ってもらえるのだと思います」

泥臭く、手間も時間もかかる。効率、速さが求められる現代社会の、真逆をいく。でも、やっていることは、地域創生の最先端。

このギャップが、ふるさと熱電の事業の面白さなのですね。

わいた地区の取り組みを、日本全国へ

現在、熊本県小国町のわいた地区では、地熱発電事業がきっかけとなり、一度はなくなった地域の伝統の盆踊りが復活するなど、地元住民の皆さんが主体となった地域創生が広がりを見せています。

石川「今、日本の温泉街の多くが、存続の危機にあります。素晴らしい文化や景観があるにも関わらず、廃れていく温泉街が、日本中にはたくさんあって、コロナ禍で、ますますそれが加速している。そのような温泉街が再び復活し、生き残るための最後の秘策…それが『地熱発電』だと僕は信じています。
小国町で地域創生の道筋がついたら、僕は、これから全国のどの町でも、地域創生を担える人間に、なっていきたいです」

そう語る石川さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

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