
【制作ストーリー】
会社名:代表世話人株式会社
事業内容:世話人業
創業者:杉浦 佳浩(すぎうら よしひろ)
ストーリータイプ:ユーザーインタビュー
有名ソーシャルメディア「JobPicks」の編集長、佐藤留美が「メンター」「お師匠さん」と言って慕う人物。それが、代表世話人株式会社の杉浦佳浩氏。彼女から見た杉浦氏の魅力、プロの仕事術について紹介していきたい。
「私が『仕事2.0』という本を出版した時、大阪と東京で、それぞれ100人規模の講演会を開いてくれた方がいるんです。後にも先にも、そんなことをしてくれたのは、あの方しかいない。私のお師匠さんです」
そう語るのは、JobPicks編集長の佐藤留美。
JobPicksは、「みんなでつくる仕事図鑑」をコンセプトにした、職業軸のキャリア情報メディアだ。
有料会員15万人を超えるソーシャル経済メディア、「NewsPicks」の姉妹キャリアメディアとして、佐藤らが2020年に立ち上げた。
佐藤は、NewsPicksの立ち上げにも携わっており、現在同メディアの副編集長を兼務している。
そんな彼女が、「お師匠さん」と言って慕い、尊敬してやまない人物とは…。
代表世話人株式会社、代表取締役、杉浦佳浩氏。
佐藤のお師匠さんである、杉浦氏(左)
なんとも聞き慣れない会社名に、髪型はスキンヘッド。有名ソーシャルメディアの編集長が、なぜ杉浦氏をそこまで慕うのか、わけを聞いてみることにした。
目次
佐藤は、もとはフリーランスの編集者であり、ライターだった。
2014年、NewsPicksの立ち上げに誘われ、有料会員がまだ数十人の段階から、立ち上げに携わってきた。
どのようにしてメディアをお客様に認知させるか、ユーザーを増やすためにはどうしたらいいか、トライアンドエラーを繰り返しながら、NewsPicksを育ててきた。
佐藤「NewsPicksは、他の媒体よりも、若い年齢層が多い経済メディア。読者の大半が20代〜40代。
では、そういう若い人たちが、もっと見たいと思える経済メディアにするにはどうすればよいかと考えました。
『彼らは、経済以前に、就職、転職といった目の前の自分のキャリアに悩んでいる。じゃあ、現役の社会人の先輩たちが、自分の仕事についてリアルに披露し、その情報をもとに、『読者が自分のキャリアをより良いものにしていけるメディアを新たに作ってはどうか』ということで、生まれたのが『JobPicks』なんです」
日本では、大学在学中に就職活動をし、内定をとり、卒業後に新卒で就職するというのが、キャリアスタートとしては一般的だ。
だが日ごろ、社会人と接する機会が少なく、世の中にどのような職業があるのかをよく知らない若者にとって、就職先を調べ、検討し、決定するのは至難の業。
限られた選択肢の中で就職活動を行った結果、入社した会社が自分に合わず、すぐに辞めてしまう若者も少なくない。
今や、社会問題とまで言われている。
佐藤「『会社を辞めるのがだめだ』というわけじゃないんです。ステップアップのための転職は素晴らしいと思います。でも、やる気が高くて才能もある人が、就職活動時のミスマッチが原因で、入社後すぐに辞めて、職を転々とする。
これってすごくもったいないことですよね。このミスマッチを、何とかして解消したいと思いました」
「今の日本は、一度キャリアにつまづくと、軌道修正しづらい」
新卒で就職した会社を早期退職すると、「本人に問題があったのでは」「我慢強さが足りないだけ」などと解釈されることも多い。
また、子どもが生まれ、育児に専念するために一時的に職場を離れた場合、再び働きたいと思っても、働き方や勤務地に制限がある人の復帰は、そう簡単ではない。
佐藤自身、結婚を機に専業主婦を経験し、社会復帰の難しさを痛感した一人だ。今の若者の置かれた状況が、当時の自分と重なって見えた。
怒りにも似た感情が、佐藤を突き動かした。
佐藤「一度つまづいたり、一時期に仕事から離れたといっても、能力そのものが落ちたわけじゃないでしょう?それなのに、就職先の自由度が低くなったりするのはおかしいなって。
会社に入っても、会社都合で配属、転勤、異動などが決まることも多いですよね。
人には向き不向きがあるし、置かれた状況も違うのに、本人の意思でキャリアが選べないことも、おかしい。
そういった部分をできるだけ透明化して、今の若い人たちのキャリアの悩みを解消したいと思ったんです」
そんな彼女が、杉浦氏と出会ったのは、2015年のこと。
まだNewsPicksが成長段階にあり、会員数が1〜2万人の頃だった。
知り合いから「佐藤さん、絶対に会っておいた方がいい人がいる。年間1000人の経営者と会い続けてる人だ」と言われて杉浦氏を紹介され、NewsPicksのオフィスで面談したのが最初の出会いだ。
佐藤と杉浦氏の出会いは、今から約7年前に遡る。
佐藤「まず会社名が、『代表世話人』って何者?と思いました。
杉浦さんは、『僕は、人と人のご縁を繋いでいる。顧問契約をしている会社はあるけれど、それ以外は、おせっかいでさせてもらっているようなもので…』とおっしゃって。
でも、わざわざアポイントを取って会いに来るなんて、大抵は売り込みでしょ?だからきっと杉浦さんも、何か売りたいものがあって来られたんだろうなって。
でも、何分話しても一向に切り出さないから『杉浦さん、一体何を企んでるんですか?』って思わずこっちから聞いちゃった(笑)」
すると杉浦氏は、嫌な顔ひとつせず笑って「いえ、何も企んでませんよ」と答えた。
この会話でいっきに打ち解けた二人。その後はどちらからともなく連絡をし、毎月のように会い、情報交換する間柄になった。そして、出会いからもうじき7年になろうとしているが、未だに、杉浦氏から何かを売り込まれたことはない。
杉浦氏との面談は、いつも笑いが絶えない。
佐藤「杉浦さんは、今では私のお師匠さんであり、メンターであり、ロールモデルであり、社外上司であり…本当に大きな存在。
だから、悩んだ時、壁にぶつかった時、真っ先に杉浦さんの顔が思い浮かびます。杉浦さんは、何を相談しても、否定せず、受容してくれる。だから安心して話すことができる。
アドバイスをいただくことも多いですが、それも強要されません。あくまで、提案するだけで、遠くから見守る親のようなスタンスですね。それが、ものすごく心地良いです」
佐藤が杉浦氏を「お師匠さん」と慕う理由は、その人間性だけではない。彼の、ビジネスマンとしての仕事の基礎力の高さも、佐藤に大きな影響を与えている。
新年、顧問先企業にて書き初めをしている杉浦氏。
杉浦氏は、20代の頃、キーエンスで働いていた。
キーエンスと言えば、経常利益率50%を超え、年収ランキング常連で、ハードワークな会社。数精鋭の超できるビジネスマン集団として有名だ。
そこで、営業の型を叩き込まれ、退職時には全社員から胴上げで見送られる程に成果を出し、会社に貢献した杉浦氏。
その後は三井住友海上にて、圧倒的な成果を作り続けてきた。
ただ本人は、そんな過去の実績など、一つもひけらかさない。至って謙虚なのである。
端末を使いこなし、効率よく仕事をこなす杉浦氏。
佐藤「杉浦さんの仕事の仕方は本当に美しい。どんな職種や業種にも共通する、王道だと思います。
連絡もマメだし、その伝え方も丁寧。相手のことを考えて、気持ちを慮って下さるから、とても温かい。
きっとその姿勢は、これまでの営業経験の中で、長い年月をかけて磨き上げられてきたものだと思います。
また、組織の中で物事をスムーズに進めていくことにも精通されています。
キーマンを押さえることや、根回しの段取り、人間関係で悩んだ時に、誰にどのように力を借りるといいか等も、具体的に教わりました。
私はいつも直球で勝負してしまう性格だから…(笑)杉浦さんにはとても助けられました」
佐藤は、杉浦氏からもらったアドバイスをすぐに実践しては、その結果を報告した。
そういったやり取りを重ねるうちに、杉浦氏は、佐藤にとって、かけがえのない存在になっていった。
杉浦氏を語る上で、佐藤にとって、忘れられない印象深い出来事がある。それは、佐藤が2018年に「仕事2.0」という書籍を出版した時のことだ。
この出版に合わせて、杉浦氏はなんと、佐藤をゲストに招き「働き方を考える100人規模の講演イベント」を企画、開催してくれた。しかも、大阪と東京で、2回もだ。
当時開催された大阪でのイベント「これからの働くを考える」
集客、会場の手配、受付、司会等を、杉浦氏の周りの経営者仲間が協力し、全て取り仕切った。当日は、佐藤らが働き方をテーマに話をし、参加者全員が自分の働き方を考え、話し合い、背中を押される、有意義な場となった。
書籍も、ほとんどの参加者が購入してくれた。
佐藤「講演会の企画は、私から頼んだわけではないのに、『佐藤さん、せっかくだから、講演会をしましょうよ!』と企画してくださって。経営者や士業の方々との出会いがたくさんあり、本当に素敵な場でした。あんなことをしてくれる方は、後にも先にも、杉浦さんしかいません。
しかも、無償で。どれだけお礼をしても、し尽くせません」
大阪のイベントで仲良くなった経営者たち。
「仕事2.0」で佐藤は、これからの時代に自らをアップデートする大切さについて書いた。
新しい仕事がどんどん生まれる一方で、馴染みのあった仕事がひっそりと消えていく。だからこそ、自分たちも常に、変化し続けなければならない。
実際、佐藤が携わる編集記者の仕事一つとっても、この25年で求められることが大きく変わった。
佐藤「昔は編集記者というと、文字を書くことだけが仕事だったのに、現在のNewsPicksでは、『動画に出て話す』『セミナーのモデレーションをする』『デザイナーと組んで絵コンテから演出する』など、求められる内容や幅が大きく変わりました。
このような変化を『大変な世の中だ』と嘆いたり、義務として捉えるのではなく、前向きに、楽しみながら変わっていこうよ…まさに、『日本に、杉浦さんのような人が増えてほしい』という想いを込めて書いた本でした」
この変化の激しい時代に、杉浦氏は、常に凄まじい量のインプットを行い、自分をアップデートし続けている。しかし彼は、それを義務や努力だと思っていない。
まるで息を吸うように、自然に行っているのだ。
毎月欠かさず、仲間の経営者たちとお遍路をしている杉浦氏。
毎週のように、10代や20代の経営者を紹介され、自分は彼らの親以上の年齢にも関わらず、決して偉ぶらず、奢らず、若者からも素直に学ぶ。
杉浦氏に会うと、お客は常に新しい情報に触れ、未来の話に胸を踊らせる。杉浦と過ごす時間は、温かく、楽しく、刺激的で、とても豊かだ。
だからお客はまた、彼に会いたくなる。
佐藤「杉浦さんはいつも、抽象的なことから具体的なことまで、全く違う角度からの解決策を持ってきて下さる。そして、いつもユーモアに溢れている。
それは、絶え間ないインプットから生まれてくるもの。決して、一朝一夕にはできません。
だからすごいなって思うんです」
佐藤は2019年に、大きな病気を患った。「仕事2.0」の出版の後だった。
この病気をきっかけに、これまで以上に、これからの自分の生き方について真剣に考えることとなった。
佐藤「私はずっとメディア運営に携わっていますが、メディア運営は、直接的に経済にイノベーションを起こしているわけではありません。でも日々、読者の誰かに、何かしらの生きるヒントや行動変容をもたらしている。
この積み重ねが、日本をもっとより良くしていく。
病気をきっかけに、読者一人ひとりに、さらに良い影響が与えられる仕事をしていこうという意思が固まりました」
そんな佐藤の入院中、支えになったのが、杉浦氏からの応援だった。
佐藤「入院中、杉浦さんは『復帰したらお茶しましょうね』と連絡をくださったり、お見舞いの言葉を何度もくださったりして…それがとても心に染みて、励まされました。
杉浦さんも、ご病気された経験があるから、そういう人にすごく優しい。私もあの方のように、利他の心で、生きていきたいと思ったんです」
杉浦氏も、数年前に大病を経験している
また杉浦氏の、相手に対して誠心誠意、丁寧な対応をする姿勢は、その後の佐藤の仕事の仕方にも大きな影響を与えた。
佐藤「メディアの仕事をしていると、取材してもその内容のとおり掲載できなかったり、依頼した当時の内容と掲載内容が全く変わってしまったりすることがあります。
また時には、タブーと言われるブラックボックスに取材で切り込み、指摘するという場面もあります。
必ずしも、関わった全員が、笑顔になるわけではないこともあるんです」
そんな時でも彼女は、相手に誠心誠意向き合うことを、今まで以上に心がけるようになった。
佐藤「『これは、読者が求めていることなのだ』という意義を自分が信じて、魂をこめて相手に伝える。また、不義理をした時にはちゃんと謝る。絶対にコミュニケーションを諦めない。
これらは全て、杉浦さんから学んだことです。
といっても、まだ杉浦さんの30%くらいしかできていないけれど…(笑)」
病気をきっかけに、佐藤の仕事に対する姿勢は、より「利他の心」へと、進化した。
彼女は「お師匠さん」の教えを自分の中に吸収し、一人でも多くの読者の背中を押すべく、日々心を込めてメディアの運営に臨んでいる。
仕事2.0講演会にて、参加者や運営者との一コマ。
佐藤は杉浦氏を「京都の名門料亭」と形容する。
一見さんお断り、紹介を受けた者しか出入りできない。知る人ぞ知る、隠れ家的な名店。お客は一流のプロフェッショナルばかりだ。
メディアで紹介され、毎日行列が絶えないお店はめざさない。ご縁があった人たちに、ユーモアたっぷりに、誠心誠意お世話をする。そのことで目の前の相手が喜んでくれれば、こんなに嬉しいことはない。
それが、杉浦氏の変わらぬスタンスだ。
佐藤「仕事の基礎力がものすごく高く、日々インプットを欠かさない。そして、相手とのコミュニケーションを何より大切にする。そんな杉浦さんが紹介してくださる方や本は、時に『そんなこと、想像したこともなかった!』というサプライズだったりします。
でも、蓋をあけてみたら今の自分にドンピシャで、はずれが一個もない。セレクティブに、その時の自分にあった料理を出してくれる。まさに、京都の名門料亭のような方ですね」
いつも笑顔で、ユーモアに溢れ、ビジネスの話になれば、その膨大なインプットの中から、最適な人や情報を紹介する。
「有名になりたい」「お金持ちになりたい」といった私利私欲は一切感じられず、黒子として、目の前の相手の成長と課題解決に一点集中で関わる。
これまでどれだけの人が、杉浦氏によって救われ、想いを結実してきたのだろうか。
佐藤は言う。
佐藤「私のように、杉浦さんに、たくさんお世話してもらっているのに、まだ何も返せていないと思っている人が、日本中にたくさんいると思います。
何かお返ししようと思っても、杉浦さんはいつも『いや、いいですよ、いいですよ』と笑っておっしゃるから、それに甘えちゃって…。
だから、来年、杉浦さんが還暦を迎える時には、みんなでビックなことを企てたり、ド派手にやりたいなって実は思っています笑」
まるで杉浦は、京都の隠れ家、名門料亭のよう。
杉浦氏のような人が増えれば、確実に日本はもっと良くなるはずだ。杉浦氏のような人が増えてほしいという想いで「仕事2.0」を書いたと言う佐藤の言葉が、よく分かる気がしてきた。
名だたるプロフェッショナルと仕事を共にしてきた佐藤に、ここまで言わしめる杉浦氏。次回は、杉浦氏本人に話を聴き、その魅力を紐解いていきたいと思う。